今回はスーツをオーダーする前に知っておくべきことをお話しします。 世の中には様々な価格帯のスーツと生地がありますが、 スーツ作りにおいて生地と仕立てには相性というものが存在します。 スーツや生地を紹介するコンテンツは数多くありますが、仕立ての相性についての情報は少ないので、 そこのところをお話しさせて頂きます。
スーツの袖付けにおける生地と仕立ての相性
スーツの袖付け
袖付けはスーツ作りにおいて重要な工程で、仕事の出来不出来で着心地・見た目に大きな影響を与えます。 ジャケットの袖がない状態を想像してみてください。脇の下には大きな空洞がありますよね? この部分をアームホールと言い、アームホールよりも大きな円周の袖を少しずつ縮めながら袖を付けます。 この縮ませて縫うことを「イセ込み」と言い、袖に立体感と可動域を与えます。
生地と仕立ての相性
高級なスーツはこのイセ込みの分量をしっかりとっているので立体的で着やすい服に仕上がり、 リーズナブルなスーツは最低限のイセ量しかとらないので平面的で可動域の少ない着難い服になります。 イセ込みは生地を縮めていくことになるので、生地自体が動いてくれないとキレイにイセることができません。 例えば、ポリエステル混紡の安価な硬い生地の場合は生地自体が動いてくれないので、 こういった生地に高級スーツのようなイセを入れると袖がピりついてキレイに仕上がりません。 動きにくい生地を縮ませているわけですから、なぜそういう現象が起きるのかはお分かり頂けると思います。 なので、安価な生地はイセ量の少ないリーズナブルなスーツの仕立て方が合っていて、 イセ量の多い高級スーツには、イセやすい上質な生地が向いています。
生地と仕立てのアンバランスを起こさない為に
このように生地と仕立てに相性があることは、なんとなくお分かり頂けたと思いますので、 スーツを仕立てる際、店選びと生地選びの注意点についてお話しします。 僕が絶対にお薦めしないのは、リーズナブルなお店で高級素材でスーツを仕立てること。 十分なイセ量を入れることができる高級素材に対し、リーズナブルなスーツのイセ量は最小限なので、 素材の良さから得られる筈の着心地の良さが全く得られず、上質素材の潜在能力を完全に殺しています。 これ、一番最悪なケースだと思います。 その逆も然りで、上質な仕立てに対し、ポリエステル混紡などの安価な生地を選ぶことも、 仕立ての良さで得られる筈の本来の着心地の良さが得られません。 やはり良い物は高価で、安い物はそれなりだと言うことで、どちらが良い悪いではなく、 それらをハッキリと区分けしてごちゃ混ぜにしないことが大切だと思います。