
個人的に、これまでストライプのジャケットはあまり袖を通してきませんでした。お洒落だとは思いつつも、どこか個性が強く、自分には少し主張が激しすぎるかな......と感じていたからです。 そんな私が、久しぶりに「これなら着たい」と思えたのが、フェルラのベージュストライプでした。決め手は、その絶妙な色合いです。ニュアンスのあるベージュに柔らかな白のラインが溶け込むように入っていて穏やかな印象です。これなら、ごく自然に上品に纏える。そう直感した一着です。
春夏に珍しいアルパカ混。ふっくらと柔らかな独自の質感


FERLA(フェルラ)独自のアルパカ使い。ニットのような柔らかな風合いと意匠糸の立体感 私が今回選んだのは、イタリアのカルネがフェルラ社に別注したエクスクルーシブな生地です。 特筆すべきはその混率。ウール47%、アルパカ42%、リネン11%という、春夏物としては非常に珍しい構成です。フェルラのお家芸とも言える「アルパカ使い」が光る生地で、一見するとドライタッチでサラッとした風合いに見えますが、実際に生地に触れてみると、すごくふっくらした柔らかい風合いです。これは、アルパカが入っているおかげ。アルパカの風合いがすごく生かされていて、柔らかくふんわりとした、ニットのような伸縮性がある素材です。 ストライプもユニークで、柄糸に「意匠糸(いしょうし)」が使われています。 意匠糸とは、ループ(輪)やスラブ(節)など、生地に装飾性を与える糸の総称です。この糸でストライプを表現することで立体感が生まれ、スーツ生地にあるようなドレッシーなストライプとは違った、フェルラらしい遊び心のある雰囲気が楽しめます。
FERLAとは
イタリア・ビエラ地方のメーカー。ループヤーンなどの意匠糸を用いて、デザイン性に優れた豊かな表面感のジャケット生地を織ることで知られています。
気負わず羽織れるストライプジャケット

全体的にくすみがかったグレーっぽい色合いのベージュは、パキッとしたストライプの印象が和らいで、落ち着いた印象のジャケットに仕上がりました。主張しすぎず、他の色に馴染みやすいため、今まであまりストライプジャケットを着てこなかった私も、これなら抵抗なく取り入れられます。
生地の特性を活かした超軽量仕立て。アイロンワークで生み出す本格的な立体感

ニットのような柔らかさと伸縮性があるこの生地の長所を最大限に活かすには、軽い仕立てが必須です。 芯地や肩パットを使用すると立体感や保型性を保つことはできますが、その分、見た目も着心地もカッチリしてしまい、生地の持ち味を損なってしまいます。個人的に、この生地はジャケットと言うよりブルゾン感覚ぐらいの軽さで楽しみたいので、芯地も肩パットも一切使わない超軽量仕立てにしました。 とは言え、作りは本格的です。バストの立体感、襟からフロントにかけての立ち上がり、袖のふくらみ感など、これらはすべて、仕立ての技術とアイロンワークで立体的に仕上げてあります。
生地の特徴を最大限に享受できる芯なし仕立て

芯なしの仕立てとは、ご覧のような仕様のことです。 通常、見返し(前身頃の裏側)の内部には芯地を用いますが、このジャケットはそれらを使用していません。加えて裏地も配さず(一部のパイピングを除いて)、生地そのものの質感をダイレクトに感じられるようにしています。まさに、伸縮性に富んだこの生地一枚を纏っているような感覚。 あえて最小限の構成にすることで、生地の特徴を最大限に享受できる一着になりました。
リラックスした着心地と凛としたジャケットのフォルム

芯地も肩パットも一切使用していませんが、ナチュラルながら程よく構築されたショルダーライン、袖山、袖付けの表情。これらを見ただけで、芯地やパットが入っていないとは分からないほどです。見た目の凛とした印象は崩しすぎず、それでいてリラックスした着心地を味わえる。それがこのジャケットの目指したところです。 通常、芯地を用いた仕立てでは、肩周りから前身頃にかけて芯地が入るため、立体感と保型性が生まれます。一方、多くの芯なしの軽いジャケットは、保型性が保てず、肩に斜めの「だきしわ」が入りやすくなります。 芯がない以上、それはある種、致し方ないことですが、当店では型紙の見直しや、入念なクセ取りなどの仕立ての技術によって、この「だきしわ」が入らないように仕上げています。
ボタンを外した時に生まれる、襟からフロントへの優美な曲線

私が最もこだわっているのは、フロントの立ち上がりです。 このジャケットはフロントボタンを留めずに着ることが多いため、ボタンを外した状態で、襟からフロントにかけて緩やかなカーブを描きながら立ち上がるように設計しました。 この曲線は当店の型紙の大きな特徴ですが、理想とするラインを作り出すまでには、型紙作成の段階で何度も試行錯誤を繰り返しました。ゴージ(上襟と下襟の繋ぎ目)のライン、襟の返り位置、そしてボタン位置。これらのバランスが極めて重要で、わずか数ミリ変えるだけで全体の雰囲気がガラリと変わってしまいます。 何度もサンプル作成を繰り返し、ようやく思い描く「黄金バランス」を導き出しました。 言われないと気が付かないような細かなこだわりかもしれません。ですが、実際に袖を通して鏡の前に立ったとき、その違いをはっきりと感じていただけるはずです。
ジャケットの自由さを楽しむ「袖ボタン1個」のこだわり

ジャケットの袖ボタンをあえて1個にするのが、私流のこだわりです。 本来、袖ボタンは4個の重ね付けが最もクラシックな仕様。ですが、単品のジャケットはスーツに比べて自由で、よりリラックスした着こなしを楽しめるアイテムです。今回は、その「軽さ」を視覚的にも表現したいと考えました。好みが分かれる部分かもしれませんが、こうした細部でさりげなくリラックスした雰囲気を取り入れるのは、面白い試みだと思います。ぜひ一度、お試しいただきたい仕様です。
ビジネスシーンでも、気負わずさらりと上品に羽織っていただけます


上品で落ち着いた印象のこのジャケットは、タイドアップにもぴったりです。 白シャツを合わせるニュアンスカラーの王道コーデに、アットヴァンヌッチのウールソラーロタイをスカーフ感覚でふんわりと結ぶことで、程よくリラックスした表情が生まれます。 このジャケットの持ち味である「軽さ」と「伸縮性」を活かせば、上品で大人っぽいドレススタイルがストレスフリーで楽しめます。 ストライプジャケットはどちらかと言えばカジュアルな部類に入りますが、ビジネスシーンでも、気負わずさらりと上品に羽織っていただきたい。そんな一着に仕上がりました。
表情豊かなカラーバリエーション。色で楽しむ、FERLAの独創性
写真ではお伝えしきれない、生地の柔らかな質感や光の下での色の変化を、ぜひ動画でご覧ください。 動画の後半では、色違いのバリエーションもご紹介しています。
ヴィンテージのような深み。時の流れを感じさせる「枯れ色」の魅力
こちらがボルドーです。クリアなボルドーではなく「枯れ感」があるので、ヴィンテージのような味わいがある色味です。
続いてグリーンです。グリーンも枯れ感があるので派手な印象にはならず、こなれた感じの色味です。
続いてはネイビーです。ネイビーにベージュのストライプ。ストライプの柄色とリネンのスラブ感の組合せが秀逸です。以上の4色が、このストライプのバリエーションになります。
これまで「ストライプは個性が強く、自分には少し主張が激しすぎるかな......」と感じていた私の気持ちを動かしたのが、このフェルラ社の生地でした。 気負わず着られるストライプジャケットは、程よい存在感がありつつも万能の着まわし力を誇ります。ベーシックなアイテムとコーディネートするだけで簡単にこなれたジャケットスタイルを楽しめます。今まであまりストライプジャケットを着てこなかった方にも取り入れやすく、既にストライプジャケットをお持ちの方にとってもフェルラの意匠糸使いの独特の世界観は新鮮さを感じていただけるはずです。 実物の質感や色味を確かめてみたい、あるいは実際に羽織ってみたいといった方は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。 この一着が、皆様にとっても新しい選択肢になれば幸いです。















