ネイビーやグレーの定番色ジャケットはビジネスジャケットの王道でお持ちの方も多いのではないでしょうか。着こなしやすくて万能でとっても便利なので私自身もヘビロテで活用しています。ビジネスで着用するアイテムは定番が持つ安心感も大切ですが、お洒落好きの方なら少し冒険してみたくなる気持ちもありますよね?
そこで注目は『ブラウンジャケット』。ブラウンは大人の渋みを引き立てる色ですし、そもそもある程度年齢を重ねないと似合わない色です。そんなブラウンが持つ魅力をビジネスの装いに取り入れるべくオーダージャケットの仕上がり事例をもとに、着こなし方法をご紹介させて頂きます。
高級感と軽やかさを併せ持つ大人のブラウンジャケット
こちらのオーダージャケットの素材はドラッパーズの『GOLDEN SELECTION』という限定コレクション。ウール82%・シルク13%・カシミヤ5%で、ヨコ糸に不均一な筋が入る生地です。ヨコ方向に入った筋が畝模様のように見えるので無地ながら表情があり、ファッション性の高い素材です。柔らかな風合いながら適度なハリコシがあるので、その特徴を活かすべく芯なしで軽快な一着に仕上げました。生地に張力があるので仕立て映えし、襟から裾に掛けてふんわりと柔らかな曲線を描いています。この曲線は当店のオーダーの拘りで仕立ての技術で表現していますが、それに生地の特性が加わることでフロントがキレイな弧を描きます。260gという目付け以上に軽やかさがあり、ナチュラルストレッチの効果と相まってとても着心地の良いジャケットに仕上がりました。
素材感の違いでさり気なく洒落感を楽しむ
遠目には無地ですが、近くで見ると不均一なヨコ糸による表面感がよく分かります。ビジネスでの着用を前提とした場合、強い色柄で主張するのではなく、このような表面変化のあるジャケットでさり気なくお洒落をお楽しみ頂いてはいかがでしょうか。
襟元のワンポイントでジャケットのグレード増し
襟穴(フラワーホール)はハンドで仕上げています。こちらはイタリア・ナポリ地方によく見られる技法で『ティアドロップボタンホール』というものです。穴の部分がしずくの形をしていることからこの名称で呼ばれています。特殊な芯糸を使って加工を行うので通常のミシン縫いの襟穴と比べると立体的で動きのある襟穴に仕上がります。襟元のワンポイントとして取り入れると茶目っ気を表現できるのに加え、ジャケットのグレード感が増してより本格的な手縫いの雰囲気がお楽しみ頂けます。
立体的な袖付け
肩パッド、ゆき綿など、一切の副資材を排していますが、とても立体的な仕上がりです。当店のジャケットは一般的なMTMのジャケットよりもイセ量を多くして運動量を確保しています。少しマニアックな話になりますが、袖イセを入れる位置についてお話しさせて頂きます。当店ではジャケットの袖イセを袖の前側と後ろ側の2箇所に入れます。前側のイセ位置は変えず、後ろのイセの位置を前側(袖山の上の方)にすることで袖全体が前に押されるような感じになるのでシャツ袖のギャザーが出やすくなり、後袖のラインがキレイに出ます。その結果、たまご型の立体的な袖に仕上がります。
袖ボタン1個で軽やかな印象に
クラシックなスーツ・ジャケットの袖はボタン4個の重ね付けが基本です。スポーティーな着こなしを想定したジャケットの場合、袖の仕様を軽快にするのもおすすめです。ご覧のような袖ボタン1個という仕様も軽やかな印象でジャケットとは好相性です。この仕様はリベラーノなどフィレンツェのテーラーでよく見かけます。そういったところも参考にしてさり気なく取り入れてみるのも面白いと思います。
服地を纏うような軽やかな着用感
ご覧のように芯なし裏無しの一枚仕立てです。厳密には生地のエッジ処理の為、一部にパイピングを施してありますが、それ以外は一切の副資材を排しています。服地を纏うかのような軽やかな着心地をお楽しみ頂ける仕立て方法です。
ブラウンジャケットビジネスコーディネート
グレースラックスと合わせる着こなし事例
ブラウンジャケットの着こなしとして私が実践しているのがミディアムグレースラックスとの合わせ。ブラウンジャケットは紺ジャケットよりも趣味性が強いので、濃い色のパンツを合わせると落ち着きが生まれビジネスで使いやすくなります。落ち着いた印象のミディアムグレーのスラックスはブラウンジャケットの渋みを引き立ててくれます。
定番色のアイテムを使った落ち着いたスタイル
ブラックストライプのタブカラーシャツにネイビー地にホワイトのペイズリータイをセレクト。ブラック、ネイビー、グレーの定番色のアイテムと組み合わせて渋みと枯れ感のある大人のスタイリングを意識しています。足元のブラウンビットローファーでさり気なく着こなしに色気を取り入れています。
ブラウン系のアイテムを取り入れた程よい遊びがあるスタイル
上のコーディネートからシャツとタイを変えたスタイルです。ブラウンストライプのシャツにブラウン系のマルチカラーのガルザ(メッシュ)タイを合わせています。インナーをブラウン系で統一したこのスタイルは、先程のコーディネートよりも少し遊びがあります。ブラウンジャケットの自然な洒落感を楽しんでいます。
大人の渋みと艶っぽさを感じるリラックスコーデ
ブラウンの渋みや艶っぽさを表現するべくインナーには黒のリネンシャツをセレクト。ブラウンジャケットにコントラストを効かせた黒シャツを組み合わせることで、ブラウンの渋みや艶っぽさが際立ちます。ビジネスは勿論、休日のホテルディナーなど、あらゆる場面で活用できるスタイルです。
ブラウンジャケットビジネスコーディネート
ベージュスラックスと合わせる着こなし事例
「パンツが変わればスタイルが変わる」と言われるように、パンツはコーディネートの印象を決める大きな要素です。ご紹介のブラウンジャケットもパンツを変えると全く違ったスタイルを楽しむことができます。ここではウールのベージュスラックスと合わせるスタイリングをご紹介させて頂きます。ベージュのスラックス自体は定番アイテムで特別新しいアイテムではありませんが、多くの方がお持ちのベージュスラックスはコットン系が多いのではないでしょうか?お待ちのコットンのスラックスを活用するのは大いに有りですが、新たなスタイルとして『ウールのベージュスラックス』を取り入れてみるのも新鮮です。ウールは復元力があるのでシワを気にせずお洒落を楽しめるのも利点です。
ウールのベージュスラックスはコットンパンツと同じ感覚で活用できます。ウールのドレス感がありながら程よい寛ぎ感があるので、タイドアップしてもどことなく肩の力が抜けてリラックスして見えます。王道のジャケット&ポロ合せもウールなら脱力しつつもキッチリ見えます。少し遊びを取り入れてブラウンジャケット着こなしたい気分の時にピッタリです。
オーダーなら豊富なブラウンジャケット生地が揃っています
多くの種類の中から自分好みの生地を見付けられるのがオーダーの醍醐味です。ここからは先述の仕上がり事例以外のブラウンジャケット生地をご紹介させて頂きます。多くの種類があり全てをここでご紹介することはできませんので6種類を厳選しました。どれも素晴らしい魅力を持った生地です。
ストレッチで着心地ラクチン
ご紹介の仕上がり事例ジャケットの色違いのダークブラウンです。シャンタン生地のように横方向に不規則な筋があるので表面に動きがあり、定番色ながら新鮮な印象のジャケットに仕上がります。
DRAPERS(ドラッパーズ) ウール82%・シルク13%・カシミヤ5% 260g
メッシュ調で着心地も涼やか
メッシュ調に織り上げられたホップサックはシワになりにくく通気性に優れています。こちらは21マイクロンという太い原毛を使用しているので生地にハリコシがあり、素材が持つ機能性をよりお感じいただけます。ブラウン系では、やや赤みのあるブラウンとダークブラウンの2色をご紹介します。どちらも発色がとてもキレイで微光沢を備えています。ファッションを楽しみたい時には最初の赤みのあるブラウンを。コンサバティブに装いたい時はダークブラウンを。用途に合わせてお選び頂くのもよろしいのではないでしょうか。
DRAPERS(ドラッパーズ) ホップサック ウール100% 280g
軽やかで艶やかなラグジュアリージャケット
イタリアの老舗生地メーカー、PIACENZA(ピアチェンツァ)のサマーカシミヤシリーズです。ピアチェンツァは、古くから高級生地メーカーとして有名で、特にカシミヤの品質は世界最高レベルです。カシミヤは内モンゴル産が世界最高クラスと言われますが、ピアチェンツァのカシミヤは内モンゴル産の中でも最高品質とされる『アラシャンカシミヤ』の原毛を使用しています。こちらは、シルク49%・カシミヤ34%・リネン17%で、ウエイトが180gという驚異的な軽さを持つ生地です。カシミヤの風合いにシルクのハリコシと耐久性、リネンの清涼感が加わった唯一無二の素材です。
PIACENZA(ピアチェンツァ) シルク49% カシミヤ34% リネン17% 180g
一年中着られる艶ジャケット
上質なウールが持つ光沢を一年中お楽しみ頂けるジャケット素材です。光を反射するシルクの華やかな光沢に対し、上質なウールの光沢は素材の奥底から放たれるような深みがあります。この生地はヘリンボーン織りの陰影によってウール本来の深みのある光沢を際立たせてあります。加えて、生地にハリコシがあるので仕立て映えも抜群です。
DRAPERS(ドラッパーズ) ヘリンボーン ウール100% 240g(通年素材)
ブラウンジャケットで品良く差別化を
ブラウンジャケットはビジネスでの節度ある着こなしは守りつつ、さり気なくお洒落を楽しめるアイテムです。コーディネートも簡単でいつもの紺ジャケをブラウンジャケットに変えるだけでOKです。多くの方はネイビーやグレーといった定番色ジャケットはお持ちの場合が多いと思います。だからこそ、次なる一手としてブラウンジャケットを加えて品良く差別化を叶えてみませんか?着こなしの幅が広がると気分が変わってよりお洒落が楽しくなりますよ!店頭にはオーダージャケットのサンプルの他、多くの生地をご用意しております。少しでも「ブラウンジャケットいいかも!?」とお感じでしたらお気軽にお問い合わせくださいませ。