新モデルのフィールドジャケットのMTMが完成しました。私が自分用にオーダーした1着をご紹介させていただきます。M65に代表されるフィールドジャケットは男っぽいミリタリーな雰囲気が魅力ですが、私が目指したのは程よくドレッシーなきれいめなスタイル。仕上がりのご紹介の他、生地選びからディテールまで、私がどんなことを考えてオーダーしたのかをお話しさせていただきます。
リモンタ社のナイロンワッシャー
自分用のフィールドジャケットをオーダーするにあたり、当初はヘビーウエイトのリネンやコットンを考えていました。店頭にある生地ブックの中から幾つか気になる生地をピックアップしましたが、仕上がり具合を想像していく中でミリタリーの雰囲気をもう少し和らげたいと思いました。そう考える中で候補に上がったのがナイロンです。メーカーさんにご協力いただき、6種類10色のナイロン生地のサンプルをご用意いただきました。ストレッチ、シャンブレー、ソフトタッチなど様々な特徴を持つ素材の中から今回私が選んだ生地はイタリアの老舗合繊メーカーLIMONTA(リモンタ)社のナイロンワッシャー素材です。ワッシャーとは生地にシワを表現する特殊な加工で膨らみ感のある立体的な生地に仕上がります。プレーンな表面感が多いナイロンにおいて、シワの凹凸があるこの生地はメーカーさんにご用意いただいたサンプルの中でも個性が際立っていました。
後程、詳しくご紹介しますが、新作のフィールドジャケットはウエストがドローコード仕様になっていて、紐の引っ張り具合を調整することでシルエットをアレンジできるデザインです。膨らみ感のあるこのナイロンワッシャーなら、ドローコード仕様特有のウエストのギャザーがキレイに出ると思いこの素材に決めました。そして、オーダーではあまり見ない生地だということも決め手のひとつになりました。
色はかなり迷いました。元々、個人的にグレイッシュなブルーが気になっていましたが、グレーやベージュも魅力的です。実は1日では決めきれなくて一晩、考えました。頭をクールダウンした結果、初志貫徹、左から2番目のグレイッシュなブールーに決めました。
私が自分用にオーダーしたナイロンのフィールドジャケット
やり過ぎない自然なシワ感とリモンタナイロンならではの光沢と色の深みでとても上品なフィールドジャケットに仕上がりました。M65のようなミリタリーの男っぽいフィールドジャケットも素敵ですが、サラッとした表情の都会的なフィールドジャケットは大人のきれいめなカジュアルスタイルに取り入れやすそうです。
先述の通りウエストはドローコード仕様です。M65に採用されているディテールですが、元々は紐を引っ張ることで体に密着させてバタつきを抑えたり、風の侵入を防ぐことを目的としていたようです。現代でもこのような使い方はできると思いますが、ファッションとして楽しむためにシルエットに工夫を加えました。私がオーダーしたフィールドジャケットはラグランスリーブで適度にゆったりしたサイズ感なので、紐の引っ張り具合を調整してシルエットの変化を楽しもうと思います。ナイロンワッシャー特有のギャザーによるウエストの表情も狙い通りです。
フロントはボタンが見えない比翼仕立てでポケットはフラップ付きのアウトポケットです。比翼仕立ては正面からの風の侵入を防ぐ為に採用されたディテールのようですが、ファッション的な目線で見ると、個人的にはスッキリした見た目になるので洗練された雰囲気に仕上がる効果があると考えています。マチなしのスッキリしたポケットも同様の効果があると思います。
襟にはチンストラップが付いています。襟を立てることで首元から風の侵入を防ぐことができるディテールですが、実際は襟を立てて着ることは少ないでしょうね。私はそのような着方をすることはないので、ディテールのひとつとして楽しもうと思います。
私のこだわりは「携帯性」
フィールドジャケットは、オフにニットやシャツと合わせるのは勿論、ジャケットやスーツの上にサッと羽織ってビジネス使いもできるアイテムです。ナイロンでフィールドジャケットをオーダーしようと思った時から、外出時や旅行時などに便利な携帯性に優れたジャケットにしたいと考えていました。コンパクトに畳むのにベストな素材を考えた時、シワ感のあるナイロンワッシャーが最適でした。
パッカブルならバッグにポン!で便利
朝晩は寒いけど昼はポカポカ陽気、真冬とは違い一日のうちで気温の変化が大きいのが春先や秋口です。そんな時に便利なのがパッカブルのアウターです。ジャケットと同素材のポーチにコンパクトに収まるので持ち運びも楽ちんです。私が選んだナイロンワッシャーは薄手で防水防風性に優れていて、しかも、元々シワ感のある素材なので畳みシワも気にする必要がありません。こんなジャケットがあったら便利だと思ったので、自分自身のオーダーで実現しました。
パッカブルフィールドジャケットのたたみ方
ナイロンワッシャーのフィールドジャケットを着て感じたこと
フィールドジャケットはM65が人気ですが、個人的にはフードが収納できる立襟が苦手でした。フードを収納することで襟が硬くなるので着ていて首の後ろに違和感がありましたし、襟が硬くなることで襟が開いてしまうのが好みではありませんでした。新モデルのフィールドジャケットは襟のデザインはM51にアレンジを加えた雰囲気です。フードがないので襟の収まりも良く、襟の返りも自然でテーラードジャケットに通じる雰囲気があります。結果的に適度にミリタリーの要素を残しつつ、キレイなスタイリングに合わせやすいということを強く感じました。オンオフ問わず、色々合コーディネートを楽しもうと思います。そして、これは反省点ですが、着丈をもう少しだけ長くすれば良かったと思いました。ジャケットの着丈から6㎝長くしてオーダーしましたが、実際にスーツやジャケットの上に着てみると少しだけ前が見えました。着丈が長すぎるとカジュアル感がなくなるので許容範囲という考えもできるでしょうが、今後、お客様にご紹介する際にはその辺りをしっかりご説明した上でお好みの着丈をお伺いさせていただこうと思います。
今回も楽しくオーダーすることができました
今回は私が仕立てた自分用のフィールドコートをご紹介しました。新デザインということもあり、先ずは自分用にオーダーして適切なサイズ感などを把握する意味合いもありました。実際にオーダーしてみると数値上では分からなかったことやデザインと素材の相性など、色々な気づきがあります。自分自身が楽しみながらオーダーすることで、その体験をお客様からいただくオーダーにフィードバックしていくことがとても大切だと思っています。パッカブルへの初挑戦など自分用のオーダーだからできることも試すことができ、これでお客様にご紹介するオーダーメニューが増えました。
100% ナイロン 118g/m