
ネイビーブレザー(ジャケット)は、着こなしに欠かせない定番アイテムとして、最も多くの方に選ばれています。合わせるパンツの色を選ばず、様々な着こなしを楽しめる普遍的な魅力は、時代を超えて支持されています。メンズネイビーブレザーは奇をてらったデザインではないからこそ、こだわりが細部に宿ります。選ぶ生地によって雰囲気が変わり、着丈やシルエット、襟幅やゴージ位置、ポケット位置、ステッチの入れ方や選ぶボタンによっても様々な表情を作り出すことができます。定番=変わらないではなく、定番だからこそ、時代の空気や自身の気分を取り入れて進化させていけるのが、ネイビーブレザーをオーダーする楽しみ方のひとつです。このコラムでは、ネイビーブレザーを特別な一着にするための要素を、当店の仕立て事例を通してご紹介いたします。
ネイビーブレザー(ダブル6つボタン)の素材:フォックスブラザーズのフランネル

英国の伝統と品質を誇るフォックスブラザーズの『Classic Flannel』を使用したメンズネイビーブレザー(ダブル6つボタン)。フォックスブラザーズを代表する生地と言えばフランネルが有名ですが、中でもこの『Classic Flannel』コレクションはオーセンティックな色柄を収録した王道コレクションです。生地の目付けは370/400グラムでしっかりした目付けのコシのある生地です。
重厚なフランネルと軽やかな着心地の両立

ダブル6つボタンのトラディショナルなスタイルは、しっかりした目付けでコシのあるフォックスブラザーズのフランネルと相まって、非常にクラシックで存在感のある一着となりました。 ここで特筆すべきは、英国らしいコシのあるフランネルを、当店では、軽く柔らかな仕立てでお作りした点です。ダブル6ボタン2つ掛けのデザインでありながら、フロントが柔らかく返るほどソフトに仕立てることで、重厚な見た目と快適な着心地を両立させました。
軽快な着心地を追求したマニカカミーチャ

袖付けにはマニカカミーチャ(雨降り袖)という手法を採用しています。 ジャケットの袖は通常、肩先と脇の前後に「たれ綿」という副資材を用いて形を整えますが、マニカカミーチャでは、これらの副資材を一切使わず、肩先に細かくギャザーを入れて袖付けを行います。 ナポリのジャケットによく見られる手法ですが、ナポリのサルトが作るジャケットはマニカカミーチャにしつつも肩パッドをしっかりいれた構築的な肩のラインを表現しつつ、袖付けをマニカカミーチャにして肩先からストンと落とすようなフォルムに仕上げます。
対して当店では、その特徴を活かしつつ、お客様に極上の着心地の軽さをお楽しみいただくことを最も重視しています。そのため、あえて薄手の肩パッドをセレクトし、曲線的で柔らかな肩のラインを表現しています。 この仕立てにより、肩先から丸みを持たせた自然な曲線を描き、見た目のリラックス感が生まれるのはもちろん、袖を通した際に極めて軽やかな着心地を体験していただけます。
クラシックなネイビーブレザーに宿るディテール

オーセンティック(正統的)なネイビーブレザーだからこそ、ディテールの選択がその表情を大きく左右します。当店では、お客様が選ばれた生地の特性や雰囲気に合わせ、最適なディテールをご案内しています。 このブレザーは、コシとハリのあるフォックスブラザーズのフランネル(英国)の重厚な雰囲気を、カッチリ作らず軽く柔らかく仕立てるという当店の考えに基づき、手仕事の要素(ナポリの香り)を加味しました。 具体的には、人の視線が集まりやすい襟元に、ハンド仕上げのフラワーホールとダブルステッチをアクセントとして取り入れています。これらのディテールは、手仕事の柔らかな雰囲気をブレザーに吹き込み、ブレザー全体の印象を柔らかな印象に仕上げるという効果をもたらします。
控えめな主張のシルバーのメタルボタン

ボタンにはシルバーのメタルボタンをお選びいただきました。 ゴールドのメタルボタンが持つ伝統的な英国風の重厚感に対し、シルバーは落ち着いた光沢で軽快かつモダンな印象を与えます。そのため、イタリアのサルトリアに見られるような洗練された着こなしがお好みの方や、控えめな印象でメタルボタンのブレザーを幅広く楽しみたい方には、魅力的な選択肢となります。
ネイビーブレザー完成とお客様の声

フォックスブラザーズのフランネルを使用したダブルのネイビーブレザーが完成いたしました。 お客様からは、重厚感のある英国生地の迫力と、当店独自の柔らかな仕立てによる快適な着心地の両立について、大変ご満足の声を頂戴いたしました。 このブレザーに施した「英国生地を軽く仕立てるための工夫」や、お客様がこの一着をオーダーされた詳しい経緯、他にお仕立ていただいたアイテムに関するお話は、下記のコラムにてご紹介しております。ぜひ併せてご覧ください。
【オーダーの経緯】このブレザーが完成するまでの詳しいお客様の声
ネイビーブレザー(ダブル6つボタン)の素材:ドラッパーズのオパリス

ドラッパーズの『OPALIS』を使用したメンズネイビーブレザー(ダブル6つボタン)です。ファッション好きの琴線に触れる時流を捉えたコレクションを展開するドラッパーズの中でも、『OPALIS』はクラシカルな柄を中心にラインアップされた秋冬ジャケットコレクション。ウール100%、310グラムという普段使いしやすい組成も魅力です。
王道とモダンの融合。イタリア的な艶を楽しむ

王道のネイビーブレザーながら、生地の光沢や発色によってクラシックでありながらモダンな雰囲気を持つジャケットに仕上がりました。 英国生地を用いた粗野な雰囲気のネイビーブレザーも素敵ですが、この生地の艶や発色を楽しむモダンなネイビーブレザーも新鮮です。色気のあるイタリア的なスタイリングにも取り入れやすい一着となりました。
ドレッシーさと軽快さの絶妙なバランス

このネイビーブレザーは、ボタンを外したときにフロントがふんわりと返るよう、軽さと柔らかさを追求しました。芯なし仕立ては非常に軽快ですが、今回はネイビーブレザーに求められるドレッシーな雰囲気を損なうことを避け、同時にかっちりと硬い仕上がりにならないように配慮しました。 そこで、芯なしの軽さを活かしつつ、フロントを適度に保型してドレッシーに見せるため、表生地を見返しまで使用するアンコン仕立てを採用しました。これにより、見返しに厚みが出て程よくフロントを保型。襟と身頃には芯がないため独特のドレープが生まれる一方で、アンコンの構造がフロントの返りすぎを防ぎ、ドレッシーさと軽快さの絶妙なバランスを実現しています。
生地と仕立ての協調。マニカカミーチャの柔らかな表情

ドラッパーズの『OPALIS』は生地に程よい膨らみ感があるため、マニカカミーチャによる肩先のギャザーが美しく表現されます。 丸く膨らみ感のある肩先の表情は、このジャケットが持つ程よくリラックスした雰囲気に完璧に調和しています。
膨らみ感のある生地に映えるハンドホールの立体美

フラワーホールはハンド(手かがり)で仕上げています。芯糸を用いて手かがりを行うことで、機械では出せない立体的な膨らみを持つホールとなります。 膨らみ感のあるジャケット生地との対比でハンドのホールが一層映え、このネイビーブレザーの柔らかな表情をディテール面からも支えています。
華やかさを纏う。ゴールドメタルボタンの存在感

華やかさのあるドラッパーズの生地の雰囲気に合わせ、あえて重厚感のあるゴールドのメタルボタンをセレクトしました。 定番のネイビーブレザーに使用されるメタルボタンですが、今回は艶やかな生地の持つモダンな表情を引き立てるため、アクセサリーのような輝きを持つものを選んでいます。 前の事例でご紹介したシルバーボタンの軽快さとは趣が異なり、ゴールドボタンはクラシックかつ華やかな印象を加え、このダブルブレストのネイビーブレザーに存在感を与えています。色気のあるイタリア的なスタイリングの良きアクセントとなります。
私が追求した仕立ての形


このダブルのネイビーブレザーは、ドレッシーさと軽快さを兼備した仕立てを追求し、自ら体現するためにオーダーした一着です。 実際に着用すると、芯なしによる軽快な着心地ながら、生地の厚みと膨らみ感という素材の特性を大見返し(アンコン)という構造によって最大限に活かし、フロントが適度に保型されていることが分かりました。これにより、ドレッシーな見た目とリラックスした着心地の両立を実現しています。柔らかさの中に膨らみ感のあるドラッパーズの『OPALIS』は、この「軽さとドレッシーさの両立」という仕立て方と最良の相性を見せてくれました。
ネイビーブレザーをご検討の方へ
ネイビーブレザーが定番として時代を超えて愛され続けるのは、単に合わせやすいだけでなく、生地やディテール、仕立ての技術によって、着る方の個性や現代的な感覚を反映させ、常に進化させていけるからです。 このコラムでは、ネイビーブレザーを特別な一着にするための様々な要素を、当店の仕立てを通してご紹介しました。 「どの生地を選べばいいか」「自分の体型に合うか」「どんなディテールにすべきか」、そのような迷いもあることと思いますので、ぜひお気軽にご相談ください。お考えのイメージを具体的な形にするお手伝いをさせていただきます。ご相談・お問い合わせは、お電話もしくはメールにて承っております。














