あるお客様との出会いから、特別なコートが生まれました。最上級のスーツ生地「グリーンヒルズ」で仕立てた、軽やかなライトウェイトコートです。 始まりは、一通のメールでした。お客様はサンローランのシルクトレンチコートに感動し、「風になびくほど軽やかでありながら、上品さと丈夫さを兼ね備えたコート」を求めていらっしゃいました。私は、このご要望に応えるべく、対話を重ね、生地の特性を伝える動画を作成するなどして、お客様のイメージを具現化するお手伝いをさせていただきました。
オーダーコートのヒアリングと事前準備
ご来店までの間も、引き続きメールでお客様と綿密に対話させていただきました。トレンチコートはパーツが多く特殊なデザインのため、ビスポークでの対応となることを丁寧にご説明。一方で、MTMでご用意しているラグランスリーブコートをベースに、トレンチコート風にアレンジする別案もご案内し、検討の幅を広げていただきました。 また、関西にお住まいのため何度もご来店いただくのは難しいと判断し、事前のヒアリングを入念に行った上で、ご来店当日はじっくりお話ができるように、3時間ほどお時間を確保していただきました。そして、理想のイメージを共有するため、参考となるお手持ちのコートや画像のご持参もお願いしました。このようなご協力をいただきながら入念な事前準備をした上でお迎えしました。
トレンチコートから軽やかなラグランコートへ
ご来店いただき、改めてお話を伺いました。その中で、お客様はこうおっしゃいました。 「よく考えてみたら、トレンチコートのデザインが欲しいというよりは、風になびくくらい軽やかなコートが欲しいということに気がついたんです。」 この言葉から、お客様が本当に求めていたのは、特定の形ではなく「軽やかさ」という本質的な着心地なのだと理解しました。そこで私は、トレンチコートのビスポークだけでなく、MTM(メイド・トゥ・メジャー)で仕立てる軽やかなコートも選択肢としてご提案しました。お客様の求める「軽やかさ」を追求するため、ダブルのラグランコートと一枚袖ラグランコートをご紹介しました。
軽やかさを追求する、グリーンヒルズのラグランコート
お客様がサンローランでご覧になったのはシルクのトレンチコートでしたが、私は軽やかさと強度を備えた実用的な素材としてシルク混ソラーロなど候補として事前に動画でご紹介していました。 お客様のご来店までの間、私は「他にも何か、ご要望の『軽やかで優雅な風合い』に近い生地はないか」と様々な生地を探していました。その中で、私自身が過去に仕立て、その着心地に感銘を受けたドラッパーズの「グリーンヒルズ」が思い浮かびました。
私は、この極上のスーツ生地が、コートになった時の軽やかさや艶、そして何よりも「風をはらむドレープの美しさ」を熱意を込めてお伝えしました。 私の話に耳を傾けてくださったお客様は、「小川さんがそこまで言うなら、これにします」と、グリーンヒルズでダブルのラグランスリーブコートをオーダーしてくださいました。そして、仕上がりをご試着されたお客様の第一声は、「わぁ、めちゃ軽い!」でした。お客様が求めていた風になびくような軽やかさと、グリーンヒルズならではの品格が融合した一着が完成しました。
艶とドレープを最大限に活かす、私の一枚袖オーダーラグランコート
お客様に大変気に入っていただけたコートの仕上がりから、このグリーンヒルズの生地が持つ潜在能力を改めて実感しました。その経験が私の創作意欲に火をつけ、自身の理想を追求した一着を仕立ててみようと決めました。そうして生まれたのが、今回ご紹介する一枚袖のラグランスリーブコートです。 私がセレクトしたのは、控えめな深いグリーンのヘリンボーンです。一見するとグリーンだと気づかないほど落ち着いた色合いですが、光の加減や見る角度によって、その個性と上品な雰囲気が現れます。 最高級のSuper180'sから紡がれたグリーンヒルズは、カシミアを思わせるほど滑らかな肌触りです。そして、このコートに袖を通すと、生地の持つ魅力を実感できます。コートは面積が大きいため、生地をたっぷりと使うことができます。だからこそ、この生地が持つ本来の「ぬめり」や「艶」、そして「ドレープ」が最大限に活きてくるのです。スーツでももちろん美しいですが、コートの大きな面積でこそ、この生地の魅力がさらに際立ち、心ゆくまで味わえます。それが、この生地でコートを作りたかった理由です。
優雅なドレープを最大限に引き出す、デザインへのこだわり
このコートは、ゆったりとしたシルエットと、太くたっぷりした袖が特長の一枚袖ラグランスリーブを採用しました。肩から袖にかけて一枚の生地で構成されるこのデザインは、生地をたっぷりと使うことで、グリーンヒルズの艶やかさやぬめり、そしてドレープといった魅力を最大限に引き出します。 また、芯地も極力使わないことで、生地が持つしなやかさと軽やかさをありのままに活かしました。ベルテッドにしなかったのも、生地本来の優雅なドレープを心ゆくまで楽しみたいという、私個人の強いこだわりからです。
アンコン仕立てが叶える、極上の着心地
裏の仕様はアンコン仕立てにして、背中と袖の裏地はあえて付けていません。これにより、まるで生地をそのまま纏うようで、グリーンヒルズが持つ艶や滑らかな質感を最大限に楽しめます。最上級の生地を贅沢に使用することで、着心地はもちろん、見た目にも一層ラグジュアリーな雰囲気を纏うことができます。
動画で見る、コートの軽やかな動きとグリーンヒルズの艶
私が心ゆくまで楽しみたいと願った優雅なドレープ。言葉だけでは伝えきれない、この生地が風をはらみ、しっとりと揺れる様を動画でご覧いただけます。その艶やかなドレープと軽やかな動きを、ぜひご確認ください。
コートに新しい選択肢を
お客様との出会いから生まれ、私自身のこだわりを込めて仕立てたこのグリーンヒルズのライトウェイトコート。それは、軽やかさと、上質な素材がもたらす風に揺らめく艶やかなドレープをもたらしてくれる、まさにコートの概念を覆す一着です。私が感じた「コートへの新しい価値観」とは、重厚な防寒具としてのコートを、ジャケットのように軽やかに着こなすことができるという変化です。コートに新しい可能性を見出したいとお考えの方にとって、このグリーンヒルズのライトコートは、魅力的な選択肢となるかもしれません。店頭にはコートのサンプルをご用意しておりますので、ぜひ着心地を体感してみてください。ご興味をお持ちの方はメールもしくは電話でお気軽にお問い合わせくださいませ。ご要望を丁寧にお伺いし、最適な一着をご案内させていただきます。