当店はお客様が思い描くイメージを具現化するためのお手伝いができればと考えています。その為の取り組みとして『ご来店前の事前相談』を大切にしています。ある中から選ぶ既製服とは違いオーダーは選択肢が広く、生地から選んでデザインやサイズ感を作り上げていく楽しさがあります。一方で選択肢が多いからこその選ぶ難しさをお感じの方もいらっしゃると思います。
このコラムでは当店がどのようにお手伝いさせていただくかを分かりやすくお伝えできるよう、オーダーコートについてお客様からお問い合わせいただいた事例を元に、どのようなこだわりやお考えをお持ちで、それを具現化するためにどのようなご案内をさせていただいたのかをオーダーコートの仕上がりとともにご紹介します。
ご来店前の事前相談
あるお客様から、当店のホームページに掲載のDRAPERSのネイビーヘリンボーンアルスターコートについてメールでお問い合わせをいただきました。デザインや着丈がイメージどおりで素敵だと思ったので、同様の仕様でオーダーした場合の価格についてのご質問でした。お問い合わせのコート生地は廃盤になっていましたが、ご検討のコートのデザインや色目、生地などについて大まかなイメージをメールにてご質問しました。お客様がイメージしていらしたのは、『スーツだけではなくカジュアルにも着られるような厚めのしっかりした生地のネイビーのアルスターコート』です。お客様からお聞きした情報を元にご検討の参考になるような生地の画像をメールでご案内させていただきました。その時にご紹介した生地は以下の通りです。
ヘリンボーン
先ずご紹介したのは、お問い合わせの生地と同じ柄のヘリンボーンです。伝統柄ですが大柄になるとモダンな雰囲気になります。大柄のヘリンボーンはドレス・カジュアル問わずお使いいただけます。
ダブルフェイス
生地の両面が表使いできる生地をダブルフェイスと言います。(お好きな方を表にしてお作り頂けます) 裏地なしで仕立てて、さり気なく、コートの裏面の生地を見せるのもお洒落です。
ウールコーデュロイ
コットンでお馴染みのコーデュロイをウールで表現したユニークな生地です。ウールなのでビジネスにも使いやすいですし、コーデュロイのスポーティーな雰囲気があるのでカジュアルスタイルとも好相性です。
上記のように先ずは3パターンの素材のバリエーションをご紹介しました。その中でお好みに合うものとそうではないものが出てくると思います。そうすることで、少しずつご検討のイメージが明確になってくるようお手伝いさせていただきました。当店ではこのようなご来店前の事前相談を大切にしています。お客様と私の間でイメージを共有し、ご来店日までに十分な事前準備をした上でお客様をお迎えしたいと考えています。よりご満足いただける一着をお作りさせていただく為に大切にしているこだわりの1つです。
ご来店時のヒアリング
ご来店いただいた際に改めてご検討コートのイメージについてお話をお聞かせいただきました。そもそもコートを購入しようと思ったきっかけは、15年ぐらい着用していたグローバルオールのピーコートが流石に傷んできたのでコートの買い替えを検討するようになったというものでした。お客様がイメージしていらしたコートは、スーツ・カジュアルにも着られる厚めのしっかりした生地のネイビーのアルスターコートです。当初は既製品で色々お探しになったようですが、そもそもアルスターコート自体が少なくてイメージ通りのものが見つからなかったため、オーダーを検討されていました。下見も兼ねてオーダーショップを3店舗ほどご覧になったようですが、襟の雰囲気が平面的で立体感がなくピンとこなかったとお聞きしました。そんな時に当店のホームページに掲載のコートをご覧になり、着丈とデザインがイメージ通りだったということでメールにてお問い合わせくださいました。
オーダーコートおすすめ生地
コートの使用用途についてお伺いしたところ、ビジネス60%・カジュアル40%ぐらいの割合でお召しになられる想定でした。生地については、エレガントすぎる柄やお取引先との関係性を考慮した分相応の素材をお選びになられたいということでした。そのようなことを踏まえて私がご案内した生地はダークネービーの大柄ヘリンボーン。定番色&クラシック柄の落ち着きがあるのでビジネスのあらゆる場面でお召しいただけます。加えて伝統柄を大柄にアレンジすることで程よくモダンな雰囲気になるのでエレガントすぎることもなく、カジュアルでもご活用いただけます。ウール100%の目付550gの生地なので、『厚めのしっかりした生地』というご要望にもお応えできる生地です。
イメージ通りの立体的な襟とボタン位置
事前のお問い合わせでアルスターコートをご検討とお聞きしていましたので当店のモデルをご紹介しました。当店のアルスターコートにご興味をお持ちいただけた一番の理由が「襟の雰囲気がイメージ通りだった」ということです。他のオーダーショップでご覧になられたアルスターコートは襟が平面的にお感じになられたのに対し、当店のアルスターコートの襟は立体的で「これだ!」と思っていただけたようです。当店のアルスターコートは、胸元に立体感とボリュームが生まれるように広めの襟幅にし、緩やかに弧を描くラペルの曲線を大切にしています。その辺りをお気に召していただけたのはとても光栄です。
ボタン位置にもこだわりをお持ちで、ダブル6つボタンを真ん中1つ掛けでお召しになりたいということでした。他店でご覧になったアルスターコートは一番上までボタンホールが開いたVゾーンが狭いデザインで、ボタン位置の変更ができなかったようです。当店のアルスターコートはダブル6つボタン2つ掛けで「真ん中1つ掛けでお召しになりたい」というお客様のご要望どおりです。お好みでボタン位置の変更も可能ですが、ボタン位置が低すぎるとクラシックな雰囲気が強まってカジュアル使いしにくくなるので、着丈に合わせてこちらで調整してお作りさせていただきました。
コートのオンオフ着こなし事例
用途としてはビジネス60%、カジュアル40%ぐらいの割合でお召しになれるようなご要望をいただいていました。スーツの上に羽織る際はフロントボタンを止めてエレガントに。休日のニットスタイルではフロントボタンを止めずリラックスした雰囲気に。肩パッドをなくし、尚且つ、極めて薄い一枚芯を用いてお作りしているのでキッチリ見えつつも堅苦しくならない絶妙なニュアンスでオンオフの着こなしをお楽しみいただけます。
オーダーコートご注文時のフィッティング
当店ではお客様がどのようにコートをお召しになるかをお伺いして適切なゆとり寸法をご案内しています。例えばジャケットの上にお召しになる場合なら、ジャケットの肩幅から+○㎝、ウエストから+〇㎝など、といった具合です。今回はスーツの上からも着られるサイズ感をご希望でしたのでコートの中にお召しになるジャケットのご持参をお願いしました。お客様のヌード寸を採寸した後、ご持参いただいたジャケットをご試着いただきサイズ感や体型的な特徴を確認しました。さらに、当店のサイズゲージをご試着いただきご持参いただいたジャケットの寸法と照らし合わせて適切なコートの仕上がり寸法をご案内しました。当店ではお客様のヌード寸やジャケットの正確な寸法が分かれば、ゆとり寸法の多いコートは仮縫いなしでも問題なくお作りさせていただけると考えております。今回も仮縫いなしでお作りさせていただきました。勿論、仮縫い付きのご要望も承っております。
オーダーコートのサイズ感と仕上がり
サイズ感はタイトすぎるのもルーズすぎるのも好みではなく、その辺りの微妙なニュアンスが下見の際に上手く伝わらず悩んでおられました。ご要望のサイズ感は当店でお客様から一番多いリクエストで、これまでたくさんのオーダーをいただいています。『スーツの上に着ても突っ張らず、休日にニットの上に着ても大きすぎない』このサイズ感で私自身も自分用のコートを10着以上作っているので基本的なサイズ設定は頭に入っています。店頭に展示してある自分のサイズで作成したコートのサンプルをお客様の前で羽織って、お客様と私の間でご希望のサイズ感についてイメージの擦り合わせを行いました。既製品でもオーダーでもお好みのコートが見つからずお悩みでしたが、イメージ通りのコートに仕上がって大満足というご感想をいただきました。ご家族にも好評ということで大変嬉しく思います。長きに亘ってご愛用いただけるコートとなれば幸いです。
オーダーコートの納期について
今回は仮縫いなしでお作りさせていただき、仕上がりまで2カ月ほどお時間をいただきました。コートは季節アイテムなのでオーダーが一定時期に集中する傾向があります。スーツやジャケットに比べると生産枠に限りがあるため、オーダーが集中する繁忙期は生産枠がパンクして完成まで2カ月以上かかる場合がございます。着用時期が限られるアイテムなので早めにご検討いただくのがおすすめです。
※繁忙期以外なら1カ月ほどでご案内可能な場合もございます。納期は時期や受注状況によって変動します。仮縫い付きの場合はプラス3週間ほど
オーダーをご検討の方へ
当店ではご来店前のお問い合わせ段階での事前相談を大切にしております。オーダーをご検討の際には不明点や質問したいことなどがあると思います。それらをご遠慮なくご相談いただくことで頭の中を整理することができ、お考えのイメージが明確になってくると思います。オーダーをご検討の方でこのようなお悩みがある方は是非お気軽にご相談ください。お客様と一緒に考えていくことでイメージを具現化するお手伝いをさせていただきます。