当店のMTM(メイドトゥメジャー)の最上級ラインをご紹介します。 『ナポリのサルトが作るフルハンドスーツに匹敵する世界最高峰のマシンメイドのオーダースーツを作ろう!』そんな志の下にスタートしたラインで、2年以上の構想期間を経て作り上げました。既存のモデルをベースに、肩イセ、袖イセ、立体的なシルエットを形成する入念なクセ取りなど、ビスポークスーツさながらのハンドオプションを追加。ナポリ製フルハンドスーツに匹敵する最高の着心地をお約束します。 協力工場は国内最高峰の縫製工場であるアルデックス様。同社とは当店がオープンした2004年以来のお付き合いです。その技術力は勿論、得意とするスタイル、当店の拘りや考え方に至るまで、長年のお取引きの中でお互いのことを知り尽くした関係です。アルデックス様が得意とするイタリアンクラシックスタイルに当店が得意とするナポリスタイルのアレンジを加えた国内最高峰のMTMスーツです。
国内最高峰のMTMスーツ。その魅力とは?
肩イセ
肩イセとは前後の肩をイセ込んで縫い合わせることを言い、ジャケットの前肩の膨らみを作る工程です。当店のオーダースーツは通常のMTMラインでも多めの肩イセを入れていますが、ハンドラインではイセ量を最大限まで増やしました。写真のジャケットの肩線を見て下さい。「くの字」のように前に出ていますよね?肩イセを増やすことでジャケットの肩がこのように前に出てきます。 人間の体は構造上、誰しも前に出ています。肩イセを増やして前肩にすることでより体にフィットして着心地が格段に良くなります。イセ量が十分にあるので手を前に出した時にジャケットが伸びるような感覚を味わえ、ストレッチのジャケットを着ているかのような着心地になります。体型的に肩が極端に前に出ている人は肩先が当たってとても不快な思いをしますが、肩イセの多いジャケットなら着やすい服になります。 イセとは平面の服地に立体感を与える手法で、細かくぐし縫いしてから糸を引き布を縮めて縫うことを言います。肩線で前身と後身を縫い合わせるんですが、ジャケットの構造上、前身よりも後身の方が大きくなります。背の方が丸いから、その分ですね。後身の分量を増やし、イセ混んで前身と後身を縫い合わせることで運動性が増し、手が前に出しやすくなります。
袖イセ
袖イセとはアームホールより大きな円周の袖を縮めながら袖付けするようなイメージ。その縮めている分がイセ量で運動量になります。ハンドラインでは肩のイセ量を増やしたのに連動して、袖のイセ量を増やして手付けします。ジャケットの袖を手で付けると機械縫いの時よりもイセ量を30%増やすことができます。袖イセを増やすことで肩廻りに厚みが増し、可動域が広がり着心地が良くなります。更に見た目は細いけれどゆとりのある袖になり、キレイなタマゴ型の袖になります。私も師匠につきながら自分でスーツを手縫いした経験がありますが、その時に師匠に見せてもらったスーツの袖が正しくキレイなタマゴ型でした。こういった自分の経験からも、キレイなタマゴ型の袖は手縫いスーツを象徴するものだと思います。
胸ボリューム増し
胸部が立体的に膨らんだスーツは男らしく逞しいシルエットで色気を醸します。でも、その為に、分厚い芯地を使うと重くて硬い着心地になってしまい現代的ではありません。当店のスーツは通常でも薄い芯地を使いつつも立地的なシルエットを形成していますが、ハンドラインでは、毛芯をクセ取りして立体的に加工します。分厚い芯地で着心地を犠牲にして立体感を出すのではなく、芯地を特殊加工することで薄く軽い着心地のまま、立体的で優美なシルエットを作り上げます。
本襟掛け
本襟掛けとは、上襟を手で付ける手法で、襟が首に吸い付くので着心地が良くなります。ジャケットの襟はゴージを境に上襟と下襟に分かれ、さらに、上襟は地襟と表襟に分かれます。地襟とは、襟芯とカラークロスから成る襟の土台です。その土台の上にボディと同じ表地を縫い付け、それを表襟と言います。 ジャケットの襟付けは、通常は上襟を作ってからボディに縫い付けますが、本襟掛けは、地襟を先に作ってボディに縫い付けます。その後、表襟をかぶせるように付けます。こうすることで上襟が落ち着いて首への吸い付きが向上しのぼり襟になります。襟がのぼるとジャケットの上襟が首に吸い付くような感覚が得られ、ジャケットが首に乗って着心地が格段に良くなります。 ナポリのサルトの上質なスーツを見ると襟がキレイにのぼっていて独特の美しさを感じます。本襟掛けを採用することでナポリのサルトの手縫いスーツのような味わい深い見た目になります。
カーブベルト
パンツのウエストベルト部分(腰帯)には芯地が入っていますが、ハンドラインは、その形状が一般的なパンツとは大きく異なります。写真をご覧頂くと腰帯が大きくカーブしているのがお分かりいただけると思います。これはパンツの帯芯をクセ取り処理でカーブさせているからです。ウエスト周りは直線ではなく曲線ですよね?カーブした帯芯にすることで、パンツを履いた時に腰帯が体のカーブに沿うのでホールド感が増して腰にフィットするベルトになります。さらに、身頃のゆとりが増えるので、とても履きやすいパンツになります。
パンツクセ取り
人間の体を思い浮かべてみてください。ヒップは膨らんで膝にかけて細くなり、そこからふくらはぎが膨らんで足首に向かって細くなっていますよね?人間の体で最も曲線が集中しているのが下半身で、ヒップからふくらはぎにかけてが、正にカーブの集中箇所です。 クセ取りとは、この体のカーブに沿うようにアイロンワークで生地にクセを付ける作業です。サルトリアラインでは、ビスポークスーツのようにパンツを斜(ハス)にクセ取りをします。手順はこんな感じです。
①先ず膝を起点にして、そこからヒップにかけて斜めにアイロンを沿わせます。そうするとヒップに膨らみが生まれて、膝には不必要な膨らみが出ません。 ②次は同じく膝を起点にして、今度はふくらはぎ部分に向かって斜めにアイロンを沿わせます。すると今度はふくらはぎ部分に膨らみが生まれます。
ヒップ➡膝➡ふくらはぎ➡裾に向かってS字のようなカーブを作ることでパンツが人間の体の丸みに沿った立体的な形状になる為、抜群にキレイなシルエットになります。
ボタンフロント&パンチェリーナ
伝統的なナポリ仕立てのパンツの基本となるのがボタンフロントとパンチェリーナ。とてもクラシックなナポリらしい仕様ですね。ボタンフロントの場合、ボタンホールが開くので横方向への運動量があり、体型や体の動きに合わせてパンツが動いてくれます。また、パンチェリーナ仕様はウエストのホールド感が高まるのでパンツの前が下がり難くなります。ファスナーのパンツに慣れている現代では好き嫌いが分かれるディテールですが、より濃いナポリテイストのスーツを味わうにはおすすめの仕様です。
ハンドステッチ&手穴
手仕事の温もりが伝わるハンドステッチと手穴(ハンドのボタンホール)のオプションもご用意しています。着心地に関係するものではありませんが見た目に大きな影響を与えるので、ナポリの手縫いスーツのような土臭さが表現できます。