Vゾーンは対面した相手の目に真っ先に飛び込む箇所なので、変化や時代感を巧みに取り入れて着こなしを楽しみたいものです。メンズドレススタイルのVゾーンを構成しているのがシャツとネクタイで組み合わせ次第で様々な雰囲気が演出できます。ビジネスにおけるスーツやジャケットスタイルで節度ある華やかさを表現したい時、クレリックシャツは有効です。クレリックシャツの誕生秘話から鑑みたおすすめの着こなし方や着用シーンを当店でオーダーいただいた仕上がり事例を元にご紹介させていただきます。
クレリックシャツとは
一般的なシャツは襟・身頃(ボディ)・袖・カフスが全て同じ生地で作られますが、クレリックシャツは襟とカフスに白無地の生地を使用します。現代のドレスシャツは白無地の他、ストライプやチェックの柄物やカラーシャツと呼ばれる色物などがありますが、昔は白無地ばかりだったようです。その理由は諸説あり、白そのものが優美であり、その白さを維持できることがエレガントの指標であったとされています。その後、19世紀の終わり頃にストライプシャツが出現しましたが、すぐには普及せず、ボディはストライプで襟とカフスに白を配したシャツが1920年ごろに欧米で流行したとされています。今で言う『クレリックシャツ』で、現代ではお洒落なアイテムのひとつとされていますが、その発生事情を見ると白へのこだわりが強かったことを証明する存在のように感じます。余談ですがそこから派生したとされるのが『ワイシャツ』という日本独自の呼び名です。ワイシャツの「ワイ」はホワイトシャツが訛ったとされる説やシャツの形がアルファベットの「Y」に似ているからとも言われています。
汚れ隠しと疑われた色柄物
私が所有する資料によると、ベルンハルド・レッツェル著の『Gentleman Fashion 紳士へのガイド』という本には、ストライプシャツがメンズのビジネススーツに取り入れられるまでには長い道のりがあったと記されてます。理由は柄物のシャツは汚れを隠す為だと疑われるのが常だったということみたいです。その打開策として、当時のお洒落好きの人達はクレリックシャツを楽しんでいたみたいです。 その後、1930年代ごろから色柄シャツが普及し、市民権を得るようになったとされています。このような歴史的な背景を考えると、クレリックシャツが華やかでオシャレを楽しめるアイテムであるということが分かります。
当店がおすすめするクレリックシャツの着用シーン
ビジネスシーン
スーツ・ジャケットスタイル問わず、様々なビジネスシーンで着用可能です。オフィスワークでも商談時でも着用でき、控えめな中でVゾーンのコーディネートに変化を楽しめます。唯一、考慮する必要があるとすれば、お取引先とのドレスコードのバランスで、相手方がフォーマル度が強いドレスコードを採用している場合は配慮しても良いかもしれません。
フォーマルシーン
冠婚葬祭などフォーマル度の高い場面での着用はお控えいただくことをおすすめしますが、肩肘張らない式典や会合、結婚式の2次会などでは着用可能です。クレリックシャツが華やかでオシャレが楽しめるアイテムであるということを考慮いただくと、着用の可否判断がしやすいと思います。
クレリックシャツのカジュアル使いについて
白無地シャツから派生した背景を持つクレリックシャツは基本的にはドレスシャツの範疇にあるアイテムです。 ゆえに、当店ではタイドアップスタイルを華やかにするアイテムとしておすすめしています。ノータイやボタンダウンのクレリックシャツも良いと思いますが、その場合はカジュアルに振り切った方が良いと思います。例えば、古着のラルフローレンにあるようなクレイジーパターンのものや、洗いをかけてヨレ感があるようなものです。この辺りの着こなし方は好みの問題で、何が正解かということはないと思いますが、当店ではこのように考えています。
クレリックシャツを用いた華やかなコーディネート事例
クレリックシャツは一見するとコーディネートが難しいとお感じの方もいらっしゃると思いますが、実はとても着こなしの幅が広いアイテムです。その理由は白襟にあります。ここでは当店がおすすめするクレリックシャツを用いた華やかなメンズのスーツスタイルコーデをご紹介します。
ストライプスーツにストライプシャツと個性的な柄のネクタイを組み合わせたスタイルは、ともすると柄が喧嘩してしまいますが、そこをクレリックシャツの白襟が和らげています。このスタイルで襟もストライプだと少々うるさい印象になってしまうと思いませんか?襟元に白が入ることで柄同士に繋がりが生まれてバランスよくコーディネートが纏まります。これが当店がおすすめするクレリックシャツを用いた華やかなメンズのタイドアップスタイルの一例です。
私が実践しているクレリックシャツの着こなし
私自身、クレリックシャツをコットンスーツに合わせて脱力感のあるスーツスタイルを楽しんでいます。この着こなしの個人的なポイントはクレリックのタブカラーシャツを合わせているところです。コットンスーツのタイドアップは抜け感がポイントで、その役目を白襟が担ってくれています。一方で抜け感を作った分、タブカラーのタイトな襟元で印象を引き締めてバランスを取っています。とても分かりづらいポイントですが、誰も気が付かないような僅かな違いを楽しんでいます。
当店がおすすめするクレリックシャツ
こちらはトーマスメイソンのシルバーラインでオーダーいただいたメンズのクレリックシャツの仕上がり事例です。120番双糸を用いた滑りと光沢のある高級素材ですが耐久性があります。普段使いしやすい高級素材として当店でも人気のコレクションです。中でもクレリックシャツをオーダーいただくお客様からご好評をいただいているのがこのブルーストライプです。ビジネススーツの定番カラーであるネイビーやグレーと相性が良いのは勿論ですが、様々な色柄のネクタイと合わせられるので着こなしの幅が広がります。
発色がキレイなのもこの生地の魅力です。鮮やかなブルーのストライプはVゾーンに華やぎを与える他、白襟との相乗効果で爽やかさや清潔感の演出にも役立ちます。「華やぎながらも派手ではなく、個性的でありながらやりすぎない」ビジネスシーンにおいて節度あるオシャレをお楽しみいただけるシャツです。
オーダーシャツ(MTM) : fabric by THOMAS MASON SILVER LINE
襟型:セミワイド
カフス:ラウンド
クレリックシャツはスーツやジャケットのタイドアップスタイルに華やかさを添えてくれるアイテムです。コーディネートの幅も広くお手持ちのアイテムにも合わせられます。いつものスタイルにクレリックシャツを取り入れるだけで華やぎのある新鮮なコーディネートがお楽しみいただけます。店頭には数百種類の上質なシャツ素材をご用意しておりますので、ご自身だけのこだわりのクレリックシャツをオーダーしてみてはいかがでしょうか。是非お気軽にお問い合わせくださいませ。