アットヴァンヌッチ(Atto Vannucci)は、2011年7月にフィレンツェで設立されたハンドメイドのネクタイ専門工房「セブンフォールド(SEVEN FOLD)社」が手がけるブランドです。フィレンツェの高級紳士服店"TIE YOUR TIE FLORENCE"のオーナーである加賀健二氏によってスタートしました。 熟練の職人が手作業で仕立てる7つ折りのネクタイ「セッテピエゲ」は、スカーフのようなやわらかなドレープを描き、"TIE YOUR TIE FLORENCE"の目の肥えた顧客に支持されてきました。日本へは2016年秋冬シーズンに本格的に上陸しています。
アットヴァンヌッチのモノ作りと、装いへの想い
アットヴァンヌッチのクオリティを支えているのは、かつてフィレンツェに存在した名門ネクタイメーカー「マニファットゥーレクラバッテ」の熟練職人たちです。そこは、フランコミヌッチ氏の全盛期のタイユアタイのネクタイを手がけていた、本物のセッテピエゲを作ることができる非常に優れたメーカーでした。時代の流れとともにその会社はなくなってしまいましたが、セブンフォールド社がその貴重な技術を持つ職人たちを迎え入れたことで、伝統的な手縫いの技術が現代に引き継がれ、アットヴァンヌッチの立体的なネクタイが生み出されています。技術が身につくまでには長い年月がかかりますが、途絶えさせるのは一瞬です。職人が長年の研鑽により身につけた貴重な技術や知識を守り、次世代に引き継いでいくこの姿勢は、もの作りに携わる一人として深く共感します。
手畳みによる「立体形成」と、完全オリジナルの生地作り
大半のネクタイが芯地を使い、プレスを当てながら製造するのに対し、アットヴァンヌッチは芯を使わず、プレスもせず、手で畳むだけで仕上げる「3D(立体形成)」にこだわっています。あえてプレスをしないことで生まれる柔らかな表情と立体感は、昔ながらの手縫い技術があって初めて現代に再現できるものです。 また、生地作りへのこだわりも異例です。多くのネクタイメーカーはサプライヤーが提案する既存の生地から選びますが、アットヴァンヌッチはシーズンごとにテーマを設け、糸の選定から色柄にいたるまで、一から完全オリジナルで生地を織り上げています。
毎シーズンのコレクションは数百種類にも及びますが、展示会の段階でこれらすべての生地を一から用意するだけでも、本来は大変なことです。中にはオーダーが入らない生地が出る可能性もあり、そうなれば準備が無駄になってしまうリスクもあります。 さらに、オーダーが入った生地でも、注文数にはバラつきが出ます。糸の手配や生地の製造には当然「生産ロット」があるため、通常のメーカーであれば、注文がミニマム(最低数量)に達しなかった生地はキャンセルにするのが一般的です。しかし、アットヴァンヌッチに関しては、私の知る限り一度もそうしたキャンセルがありません。これはつまり、オーダーが少なかった生地であっても、メーカー側が不足分を自社リスクで買い取ることで、ロットを満たして生産しているのだと思います。どれほどリスキーでロスの多いモノ作りか、想像に難くありません。そこまでしてでも「自分たちが心から良いと思うネクタイを届けたい」という熱い思いには、本当に胸が熱くなります。生産ロットやコストの面で非常にロスが多いため、他では真似のできないモノ作りを行っており、それが唯一無二の色柄を生み出す背景となっています。
アットヴァンヌッチだけの「4つ巻き」と、見えない部分への誠実さ


アットヴァンヌッチのネクタイは、剣先の裏の端部分を4つ折りにして、職人が手作業で丁寧にまつり縫いを施しています(4つ巻き)。 一般的な高級ネクタイメーカーの多くは「3つ巻き」を採用していますが、この4つ巻きはアットヴァンヌッチしかやっていない独自の仕立てです。4回巻いて仕立てるこの手法は非常に手間がかかり、ミシンではできない手縫いならではの領域です。この妥協のない工程を経ることで、手にした瞬間に伝わる圧倒的に柔らかい仕上がりが生まれます。さらにそのこだわりは、目に見える剣先だけに留まりません。多くのメーカーが見える部分だけを3つ巻きで済ませるのに対し、アットヴァンヌッチはネクタイの上部にいたるまで、見えない部分もしっかりと4つ巻きにして手で畳んでいます。 表からは見えない細部に至るまで、昔ながらの職人技を尽くして仕立てる。この見えない部分への誠実なモノ作りこそが、アットヴァンヌッチのネクタイに宿る、気品と軽やかな表情を支えています。
洋服を引き立て、自分を輝かせるためのアクセサリー
アットヴァンヌッチが目指すのは、通常のネクタイの枠にとらわれない「洋服が素敵に見えるネクタイ」です。ビジネスの道具として義務的に締めるのではなく、自分を輝かせるためのアクセサリーとして楽しむスタイルを提案しています。完璧に隙なく着こなすのではなく、あえて少し外したニュアンスを意識し、いかにリラックスした状態で格好よく見せるかを大切にしています。私の中でこの空気感は、かつてタイユアタイのオーナーだったフランコミヌッチ氏の、どこか脱力したタイドアップスタイルが重なります。同氏と長く仕事をともにしてきた加賀氏も、やはり同じアイデンティティを持っているのだと感じます。
ビジネスにおいて「スーツにネクタイ」が絶対ではなくなった現代だからこそ、ネクタイは今まで以上に自分の個性を表現するアイテムになりました。仕事のためだけではなく、オフの日に締めたり、これまでのビジネスシーンでは選びにくかった大胆な色柄を、現代のドレスコーデの彩りとして楽しんだり。ルールに縛られなくなったからこそ、今まで以上に自由なタイドアップスタイルを楽しめる時代になったのだと思います。仕事が終われば鞄からネクタイを取り出して締め、プライベートな時間を豊かにする。そんな完璧すぎない、少し力を抜いたお洒落と遊び心を楽しむためのアイテムです。
アットヴァンヌッチのモデル
セブンフォールドという社名が表す通り、セッテピエゲがブランドの代名詞ですが、他にも魅力的なモデルが存在します。ここでは、それぞれの特徴を分かりやすくご紹介します。
セッテピエゲ(Settepieghe)
1枚のシルクを裏地も芯地を使わず、7回折り畳んで仕立てるモデルです。スカーフのような軽やかさが魅力のアットヴァンヌッチを代表するモデルです。当店がこだわるアットヴァンヌッチのセッテピエゲの詳細はこちら
クアトロピエゲ(Quattropieghe)
1枚のシルクを4回折り畳むのがクアトロピエゲです。薄い芯地を使用しているので締めやすく、スカーフのような軽やかさも味わえます。当店がこだわるアットヴァンヌッチのクアトロピエゲの詳細はこちら
ソフィア(Sofia)
通常の3つ折りの構造で、内側に薄い一枚芯が入っているモデルです。他のモデル同様に手畳みと手縫いによって仕立てられているため、セッテピエゲのような軽やかさと柔らかな雰囲気を持ち合わせています。当店がこだわるアットヴァンヌッチのソフィアの詳細はこちら
アットヴァンヌッチを代表するモデルの「セッテピエゲ 」


アットヴァンヌッチを代表するモデルがセッテピエゲです。「セッテ」はイタリア語で数字の「7」、「ピエゲ」は「畳む」を意味し、文字通り生地を7回折り畳んで仕立てられています。 具体的には、大剣側で4回、小剣側で3回、合わせて7回畳み込んでいます。芯地を一切使わず、仕上げのプレスも施さず、手畳みのみによって作られているため、まるでスカーフのようにふんわりとした、優雅で柔らかい表情を楽しむことができます。
このように、モノ作りと装いへの強いこだわりを持つアットヴァンヌッチですが、私たちがこのネクタイを店頭にご用意し、お客様にご紹介するまでには、少し時間が必要でした。続いては、当店で取り扱いに至るまでの経緯や、私たちの服作りの哲学とアットヴァンヌッチのネクタイがどう結びついているのか、そのこだわりについてお話しします。よろしければ、【当店がこだわるアットヴァンヌッチのネクタイ】のコラムをご覧ください。












